人間関係づくりは、爽やかな「挨拶」から

                           代表世話役 太田博之

 柔道・剣道・弓道・相撲などの武道の世界では、練習でも試合でも「挨拶」で始まり、「挨拶」で終わるのが基本と言われる。近所付き合いでも「あそこの娘さんは挨拶もしない。あれでお嫁に行けるのかな?」「あそこの子供たちは、元気に挨拶が出来る。親の躾がしっかりしているんだろう」といった会話を耳にする。
 どうやら、小学校に通い始めるころから、“@挨拶をする子”、“A挨拶をしない子”、“B挨拶を知らない子” に分かれるようである。@かAかBかによって、その子の将来が垣間見えるような気がする。
 様々な職場や組織の中で仕事をする時でも、その人の性格も影響するが、人間関係が上手くいかないとチームワークが取れず、仕事や成果に影響が出てくると、転部・転職になったりすることもあった。地域社会での日常生活でも、気が付かないままで仲間外れになっていることもある。
 かつて、漢字の「挨拶」の文字に何故手偏が付くのか? という素朴な疑問を持ち、辞書で調べると“「挨」は押す、「拶」は迫るの意で、本来、禅家で門下の僧に押し問答して、その悟りの深浅を試すこと。 人に会ったときや別れるときなどに取り交わす礼にかなった動作や言葉”とあった。
 私は学者でもないので“「挨拶」の「挨」は人の心の扉を押し開き、「拶」は人の心に押し迫る”と解釈している。
 現役時代には、「長幼の序」を基本に挨拶をし、コミュニケーションや人間関係作りに努力してきたつもりであるが、結果的には仕事も円滑に進み、難しい問題も解決出来たのではないかと思う。
 しかし、一旦、組織を離れ、地域社会での生活が始まると、“顔は見たことはあるが、挨拶や言葉を交わしたことがない。何処の誰だろう?”と思いつつ、すれ違うことが多い。
 そこで、チョットだけ勇気を出して「おはようございます」、「こんにちは」、「こんばんは」の挨拶を2〜3回繰り返すと、大抵の場合は返事が返って来るものだ。時間が経つにつれ、相手から先に挨拶されたり、「今日は特に暑かったですね。」と言った言葉が加わり、会話が弾んで立ち話も出来るようになる。これが人間関係作りの入り口であると思う。
 高齢化が進み、散歩をする人が増えている。老夫婦であったり、2〜3人の女性達のお喋り散歩は多いが、男性の場合は大半が一人散歩で、哀愁すら感じる時がある。どうやら人間関係づくりは女性の方が得意で、男性は苦手の様である。
 また、少し早目に引退した後輩が、「先輩、一足先に社会人から地域社会の一員になった私からのアドバイスですが、引退したら次の三つの事に注意しないと、仲間外れになりまっせ!」と教えてくれた。

1)“私は、大企業(有名な)○○会社に勤め、こんな仕事をした”と自慢しないこと。
※周りの反応…“ほー、それがどうしたの?わしには関係ないことや!”
2)“私は、社員何百人の部門の責任者(役員や本部長等)をやって来たが、
   人を使うのは難しかったですわ”等、昔の役職や地位を語らないこと。

※周りの反応…“会社では偉かったか知らんが、引退したらわしらと同じおっちゃんですがな。”
3)“厚生年金で何とか生活できると思っていたが、介護保険や税金やらで大変ですわー。  株価も下がり、えらい目に遭いましたわ”と年金や収入の話をしないこと。
※周りの反応…“厚生年金ですか?それは結構ですなー。わしらは国民年金だけでひーひー
 言うてますわ。

 
地域社会は、様々な人々や家族でなりたっている。自慢話は周りの人には無関係であり、下手をすると“声”も掛けて貰えなくなるので注意が必要、とのことであった。貴重なアドバイスである。